歯磨き・歯石
ご自分のワンちゃん、ネコちゃんの奥歯を見てみてください。
歯にかぶさるように何か付いていませんか?歯ぐきが赤くなってはいませんか?
もしそうなっているなら、それは歯石による歯肉炎の可能性があります。放っておくと炎症が進んで痛みがひどくなり、フードが食べられなくなったり、歯が抜け落ちてしまう場合もあります。一度付いてしまった歯石はなかなか取れにくく、口臭や歯周病、心臓などにも悪影響を与える事がわかってきています。
ちなみに、歯石の除去は人間と同じように超音波スケーラーなどを用いて行いますが、人に比べて体の動きが大きく危険を伴うことがあるため、ワンちゃん、ネコちゃんの場合は全身麻酔で行うのが一般的です。歯石が増えてしまったら早めに動物病院へ相談するようにしましょう。
歯石を除去したあとは、再び付かないようにすることが大切です。予防には毎食後の歯磨きが理想ですが、食事をドライフードにしたり、ガムを噛ませたり、さまざまな方法があります。また、口内細菌を殺菌するスプレーなどもありますのでご相談ください。
歯石除去前
歯石除去前
歯石除去後
歯石除去後
外耳炎・耳のケア
外耳(中耳)炎とは耳の穴の入り口から鼓膜の手前までが、蓄積した耳垢に細菌や酵母が繁殖し、耳道の粘膜が感染し炎症を起こした状態を言います。
以下の症状があったら要注意です。
- 首や耳を振ったり、地面に耳を擦ったり、後肢で耳を引っ掻く
- 痛みのため耳をみせない、触らせない、攻撃的になる
- 耳に悪臭がある
- 耳の穴の周囲が赤い
もし、該当することがあれば早めに病院で診てもらいましょう。
ひどくなってしまうと難聴になったり、斜頸(頭を傾けた状態)や顔面神経麻痺などが起こる場合もあります。病院で洗浄や薬で治療し、症状が良くなってきたら、そこで放置してはいけません。
最も重要なことは、再発しないように定期的にケアしてあげることなのです。定期的に耳の周囲や耳道内から生えてくる毛を抜き取り、通気の良い状態に保ちます。
その後、耳の洗浄液で汚れや耳垢を洗い流してあげるようにします。そうすることによって常にクリーンな状態が保てます。絶対に綿棒などを入れたりしてはいけません。
耳道内を傷つけるばかりか、汚れを奥に押し込んでしまいます。そうした不適切な処置が原因となって症状が悪化し、慢性化する例が多いのが現状です。
当院では患者様の前で実際に処置し、なるべくご自宅でもケアできるように指導いたします。
ご質問があればいつでもお尋ね下さい。
尿石症
尿石症とは、腎臓や尿管、膀胱、尿道などに結石ができることでおこる病気のことを言います。
- どのような結石ができてしまうのですか?
- 結石には様々な種類がありますが、最も多いのはストラバイト結石(リン酸アンモシウムマグネシウム)です。
結石画像
- この病気を放置してしまうと、どうなってしまうのでしょうか?
- 膀胱炎になったり、結石が尿道を閉塞してしまうと激痛を伴い、オシッコができなくなったりします。
動物は体の中の汚いものをオシッコとして排泄しているため、オシッコができなくなると、体全体が毒で侵された状態(尿毒症)となり、最悪の場合、死に至ることもある恐ろしい病気です。 - 尿石症では、どんな症状がみられるのでしょうか?
- 次のような代表的な症状がみられます。
- 血尿
- 頻尿(排尿の回数は増加しているが、量は少ない)
- 排尿する際に、痛くて奇声をあげる
- 生殖器をなめる
- 元気がない
- 食欲がない
- 嘔吐 (急性腎不全の可能性あり)
- 尿石症にならない様にする予防法はあるのですか?
- 次のような予防法があります。
- 結石ができないような食餌を与える(病院に相談しましょう)
- いつでも水を飲めるようにしておく
- オシッコを我慢させないようにする
肛門嚢炎
犬や猫の肛門の両脇には肛門嚢という分泌腺があり、底部で産生された強いにおいを放つ分泌物が排便と同時に排出されます。
しかし分泌物を排出する力が弱かったり、分泌物が通る導管がつまったりすると、排出が正常に行われずに肛門嚢内にたまってしまいます。
さらに、そこに二次的に細菌が感染すると炎症が起こることがあります。これが肛門嚢炎です。
肛門嚢炎は肛門周囲に起きる病気の中で最も発生頻度が高く、猫よりも犬に多く見られます。また、犬の中でも小型犬や肥満した犬に多い傾向があります。
肛門嚢炎では、炎症や分泌物が出ないことによる不快感が原因で以下のような症状が見られます。
- 肛門周囲を舐める、または咬む。
- 肛門付近を地面や床に擦り付ける。
- 尾を追いかける動作をする。
- 排便時に痛そうな様子を見せる。
- しぶりがある。
この写真は実際に肛門嚢に溜まった分泌液が排出不全になり、肛門嚢腺(分泌液の貯留している袋)が中で破れてしまって、その周囲が化膿してしまったケースです。
細い棒は本来分泌液を排出する穴から下に向かって挿入しています。肛門嚢腺が破れている為、先端が見えています。
正常時の分泌物はほぼ透明で黄~茶色ですが、炎症が起こっていると濁った粘り気のある分泌物が排出されます。
このような状態を放っておくと、肛門嚢内が膿で充満して発熱や食欲低下などの症状を示し、遂には肛門嚢周辺の皮膚に穴があいて、膿が出たり出血したりするようになります。
治療としては肛門嚢を洗ったり、抗生物質や消炎剤を用いた処置などが挙げられますが、何よりも肛門嚢に感染が起こらないように予防してあげることが重要です。
そのためにも肛門の周辺は常に清潔にし、定期的に肛門嚢を絞って分泌物を出してあげるようにしましょう。
上手に絞れなかったり、絞るのを嫌がったりするようでしたら一度ご来院ください。飼い主さんの前で実際に行ってご説明いたします。
正常な分泌液です。
この写真の場合は、さらっとしていてざらついた物も含まれていないので、比較的排出する際に詰まりにくい傾向にあります。
こちらはご覧のように、粘性も高く、ざらついた砂のようなツブツブした物が含まれています。
この様な性状をした分泌物を貯留させてしまうタイプは、特に定期的に絞ってあげた方が賢明でしょう。
猫の腎不全
腎臓の働きとは...
- 老廃物など体内で不要となったものを尿として体の外に出します。
- 体の中の水分や電解質を一定に保ちます。
- 血液を造るホルモンや血圧を調節するホルモンを分泌します。
これらの働きを十分に果たせなくなった状態を腎不全といいます。
特に猫は他の動物と比較してタンパク質の要求が高く、水分摂取量が少ないために、腎臓など泌尿器系への負担が大きく、これらの臓器・器官の病気を引き起こしやすい特徴があります。
腎臓は一度壊れてしまうと、二度と元には戻りません。しかし全体の75%を失うまでは正常な働きを果たせると言われています。
でもそれ以上進行してしまうと、外に出さなければいけない老廃物が体内に残り始め、以下の症状が現れ始めます。
腎不全の症状とは...(ご自宅で飼い主さんが気付く症状)
- 食欲不振、もしくは痩せてきた
- 多飲多尿(最近よく水を飲んでいる、もしくはトイレに尿が大量にしてある、と感じた場合は要注意です)
- 嘔吐、毛玉以外によく吐くのを見かける
- 毛づやが悪くなる
- 口臭がにおう
さらに進行すると、脱水、元気消失、食欲廃絶、体重減少などが進行し、重症の状態になります。
★治療法としては...(主なもの)
- 処方食(低タンパク質食)
病院で購入できます。 - 定期的な皮下点滴(多尿による脱水を防ぐ)
通院治療も可能です。 - 活性炭の投与
(体内の有害物質を吸着・除去) - 降圧剤の投与
(尿中蛋白排泄低下、糸球体および全身性の高血圧低下作用)
飼い主さんができる看護には...
- できるだけストレスのかからない環境をつくること。
- 新鮮な水を常に提供すること。
- 体重が減少しないように心掛け、処方食を食べない場合は、なるべく低蛋白・減塩食を与えること。
猫の慢性腎不全は、数年という長い年月をかけて徐々に腎臓の組織が崩壊されてくる進行性の病気です。
猫はその状態に上手く適応してよく耐えてくれますが、進行し過ぎてしまうと治療になかなか反応してくれません。だからこそ早い段階で猫の異変に気付いたら、生活の質をよりよく維持できるように血液検査・尿検査などの定期的な健康診断をお勧め致します。
乳腺腫瘍
乳腺腫瘍とは乳腺組織から発生する良性もしくは悪性の腫瘍です。
腫瘍というのは細胞が異常に増えてかたまり、しこりになったものです。
良性の腫瘍はその場所で大きくなっていくだけですが、やがて痛みが発生したり、出血したりする事もあります。一方で悪性の腫瘍は、周りを破壊しながら広がっていったり(浸潤)、体の中の離れた場所(肺など)に飛び火して、そこに腫瘍ができたり(転移)します。見た目で良性悪性を区別することはできません。
良性か悪性かは、摘出した腫瘍を病理組織検査することにより確定診断します。
犬や猫の場合、乳首が4~5対くらいあるので、腫瘍が同時に何箇所もできることがあります。同時期にできたものでも良性腫瘍と悪性腫瘍が混在することもあります。
腫瘍は悪性であっても、始めはほとんどの場合無症状で、痛みや痒みなどの仕草は見受けられません。特に猫の乳腺腫瘍は80~90%が悪性ですから、気にしていないからといって放置しないでください。
写真のケースは来院時、既に複数箇所に腫瘍があり、増大していたので全身麻酔での乳腺全摘出手術となりました。
腫瘍が小さなうちであれば、全身麻酔ではなく、局所麻酔だけで腫瘍摘出手術が可能なケースもあります。
乳腺に限らず、体にしこり(腫瘍)を発見したら早めに来院されることをお勧めします。
緑内障
緑内障とは眼球の内部を満たしている液体(眼房水)が異常に増えて、外部に排出できずに、眼球内部の圧力(眼圧)が高くなり、視神経などを圧迫して、痛み、視力の悪化を引き起こす病気です。
この状態を放置すると、眼球自体が大きくなってきて、最後は視力を失ってしまいます。
初期段階では全く症状も無く、一見普通の眼に見えるので発見が遅れてしまい、手遅れになるケースがたいへん多くみられます。
定期的な健康診断で眼圧測定することにより、早期に発見ができれば、点眼やレーザーによる治療によって、ある程度進行を遅くすることが可能となります。
しかし残念なことに、最後はそれらの治療に反応しなくなってしまうことがあり、眼球が大きく変化し、視力を失ってしまううえ、痛みだけが進行してしまいます。
痛みから解放させてあげる為に、一般的には眼球を取り除く手術を行いますがが、それに代わって当院では『シリコン義眼インプラント』という手術法を行っております。シリコンを眼球内にインプラントする事で正常な眼球の大きさを取り戻し、痛みからも解放してあげられる治療を行っております。
この方法は美容的にも良好で、角膜をはじめ、その他眼球の外側は全てそのまま温存いたしますので、言われなければ手術をした事は分からない程です。
視力が回復するわけではありませんが、何より眼球の痛みから開放されるので、術後は眼が見えないはずなのに元気になったという感想をいただきます。
この写真の柴犬のワンちゃんですが、向かって左側の眼は正常ですが、右側の眼が緑内障末期になり、眼球自体が大きくなってしまっています。(写真①)
その後、シリコン義眼インプラントの手術を受けられ、眼球の大きさが正常のものとほぼ同じになりました。(写真②③)
視力回復は残念ながら望めませんが、痛みが無くなった事で以前より大変活発になったそうです。
もし、この様な症状でお困りのワンちゃんがいらっしゃいましたらご相談ください。
外鼻喉狭窄、軟口蓋過長症
ブルドッグ、ペキニーズ、パグ、ボクサーを代表犬種とする、いわゆる短頭種犬は解剖学的に呼吸のトラブルが多く発生します。例えば、呼吸音が激しい、いつもゼーゼーと苦しそう、いびきをかく等の症状がみられる場合は要注意です。
専門的には、『短頭種気道症候群』と呼ばれ、外鼻喉狭窄、軟口蓋過長症、気管低形成、反転喉頭小嚢などの病態を総称してそのように呼んでいます。
今回はこの中でも特に発生率が高い、外鼻喉狭窄と軟口蓋過長症についてお話したいと思います。
まず、外鼻喉狭窄です。写真①をご覧ください。
鼻の穴がL字型をしていて、空気の流出入が大変悪そうな事が想像つくと思います。これではいつも『鼻づまり』の様な状態になり、鼻で呼吸をする事が困難になってしまうので、安静時でさえも口から呼吸をしなくてはなりません。
次に軟口蓋過長症についてです。軟口蓋とは、上あごの一番奥にある軟らかく垂れ下っている『ひだ』の事です。これは麻酔をかけて脱力させないと観察することができません。
写真②で舌の上に気管チューブ(指で押さえている管)が見えています。通常はチューブが気管の入り口に挿入されているのを観察できますが、このケースでは軟口蓋が過長していて気管の入り口が全く見えません。
写真③の中の鉗子で引っ張っているのが過長している軟口蓋です。
空気の通り道である気管の入り口に長い軟口蓋が垂れ下がり邪魔をするので、呼吸をスムーズに行えず苦しくなります。
しかしこれら2つの症状は手術によって劇的に改善させる事が可能です。手術方法もいろいろありますが、当院ではレーザ機器を用いた手術を行います。
それにより鼻腔の狭窄部位を広げたり、軟口蓋の長い部分を出血することなく切除する事が可能です。どちらの手術も縫合糸等は一切使用いたしません。
写真④はワンちゃんの過長した軟口蓋切除手術後です。気管の入り口がはっきりと観察できます。
写真⑤は切除した軟口蓋の長かった部分です。15mm程切除いたしました。
写真⑥は鼻腔を拡張させた手術後です。鼻の穴が大きくなったのが良くわかります。
手術後には呼吸音の軽減が明らかになり、辛く苦しそうな呼吸から解放されます。
この様な症状のワンちゃんがいらっしゃいましたら是非ご相談ください。
- 西馬込本院平日9:00-12:00/15:00-19:00日・祝10:00-12:00/14:00-17:00
- 大森海岸病院平日9:00-12:00/14:00-19:00日・祝10:00-12:00/14:00-17:00